勇気の魔法は恋の始まり。

昼間は気温も上がるようになり、梅雨もそろそろ開けようかという頃。

長期課題の作品も水帆やクラスメイトは最終調整の段階に入り、杏は北斗や水帆に檄を飛ばされながらなんとか形になっていた。

長期課題は同じテーマのモチーフを見て、そこから連想される世界観でオリジナルのオブジェや絵画を製作するというものだ。

　北斗は相変わらずの才能を発揮して学科内でも一二を争う華やかなオブジェを製作していたし、杏は独特の感性と無限に広がるアイデアで繊細な絵を描いていた。

水帆はどちらかというとモチーフに忠実なタイプで、そのモチーフの本質を見抜いて表現することを得意としていた。

そのため「連想される世界観」というテーマにはとても悩まされ、何度も教職員や同級生にアドバイスを求めなければならなかった。