勇気の魔法は恋の始まり。
「彼女、借りていいかな?」

 杏とは反対に少し可笑しそうに笑う男子生徒は杏に向かって訊く。

 水帆はこの場にいながらも置いてきぼりにされたような感覚に陥った。

「何の用ですか?」

「ちょっと杏。」

 今にも噛みつきそうな杏の腕を北斗が宥めるように引っ張る。

「敵対心むき出し、そんな警戒しないでよ。きみだって向こう側の彼氏いるじゃん。驚かないし一瞬こっち側かと思ったよ。」

 彼はさらに面白そうに言う。

 それを聞いた杏の顔からサッと血の気が引く。

「あっ待って待って、違う!ごめん!意地悪で言ったんじゃないよ!」
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