片翼の蝶


✻


教室に戻ると、何故か騒がしかった。


みんなが一つに集まって何かを話している。


不思議に思いながらドアを潜って席に着くと、
みんなが私を一斉に見た。


何?何かした?


そう思って目をぱちくりさせていると、
貴子が私の机に手を置いた。


「茜。大丈夫だった?」


「え、ああ、うん。大丈夫。
 ちょっとお腹痛かっただけ」


「そう。なら良かった」


貴子は胸を撫でおろして笑った。


こういうところ、貴子は優しいと思う。


本気で心配してくれるのは貴子しかいない。


本当に、いい友達を持ったと思う。


私は貴子に笑顔を返して、
人だかりが出来ている方へ目を向けた。


「なにしてるの?」


「ああ、これ?茜、噂になってるわよ。
 高田は茜と付き合ってるんだって」


「えっ!」


「さっき庇ったでしょう?
 だから本当は付き合ってるんじゃないかって、
 みんな噂して盛り上がっているのよ」



そんな話をされても困る。


私と高田くんはなんでもないどころか
話したことすらないんだから。


私が慌てていると、
高田くんが鬱陶しそうに友達を押しのけていた。


「だから、なんで俺が高杉なんかと!」


なんかっていうのは失礼だと思うな。


私だって一応女の子なんですけど。


女の子には優しくしろって、
お母さんに言われなかった?


「高杉!俺ら、何でもねぇよなぁ!」


「う、うん」


慌てて返事をすると、
みんなが落胆の声を上げる。


私は珀を睨みつけた。


助けてもらった身だから何も言えないけど、
珀のせいなんだからね!


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