片翼の蝶



珀は楽しそうに笑っていた。


みんなもわいわい笑っている。


笑えないのは私と高田くんだ。


特に高田くんは、あらぬ噂を立てられて
気分が悪いみたい。


そりゃ嫌だよね。


貴子みたいに可愛くて
人気のある女の子と噂されるならまだ分かるけど、


私みたいな冴えない女の子が相手じゃ、
気分も悪いよね。


なんだか自分が情けなくなってきた。


俺ら、何でもねぇよな?


それが初めての会話だなんて……。





ようやく騒ぎが落ち着いて、みんなが席に戻る。


私も席に着いてノートを取り出した。


早く続きを書きたい。


珀をせっついてノートにペンを突き立てた。


珀も私の顔に近寄り言葉を紡いでいく。


私はふと、高田くんの背中を見つめた。


耳が赤くなっている。


恥ずかしいのかな。


そりゃそうだよね。


自分は寝ていただけなのに、
起きたら大変なことになっているんだもの。


一番訳が分からないのは高田くんだ。


頭を抱えて机に突っ伏す姿を見て、
その背中に小さくごめんねと呟いた。


そして、ありがとうとも。


珀が乗り移っていたとはいえ、
男の子にあんなふうに庇われることなんてなかったから、
単純に嬉しかった。


きっと恋をするのなら
あの瞬間なんだろうなと思う。


自分を庇ってくれた男の子に恋をして、
それから急展開を迎える。


そんなラブストーリーがあったらいいのにな。



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