片翼の蝶
すぐに読んでしまうのかと、
少しドキリとした。
でも貴子は手紙に目を通している。
貴子の真っ直ぐな目が手紙に書かれている文字をなぞる。
手紙はそんなに長くないはずなのに、
時間が止まっているかのように長く感じた。
一度ごくりと喉を鳴らした時、
貴子が目を上げた。
「つまりは茜、私と
仲良くなる気があるってこと?」
「そう、だよ」
「……こんなの、口で伝えなさいよね」
貴子の言葉は素っ気ないものだったけれど、
とても柔らかかった。
唇は緩やかに弧を描いていて、
私を真っ直ぐに見る眸はとても優しかった。
ああ、貴子は分かってくれた。
私の気持ちを汲み取ってくれた。
やっぱり私は、彼女が好きだ。
急に涙が込み上げた。
ボロボロ人目もはばからずに泣いて、泣き喚いた。
貴子はびっくりしたように目を丸くすると、
すぐにおかしそうに笑って、私の頭を撫でた。
ほら、泣かないでよ。どうしたの?
よしよし、泣き止め!
みっともないじゃない。茜?
取り巻きが私を見ていたけれど、
貴子がしっしと取り巻きの子たちを追い払ってくれた。
手紙に書いたことをすぐに実行してくれる彼女を見て、
また自然と涙が零れた。
これからは私たち、対等に出来るのよね?
もう、貴子の目に怯えなくてもいいんだよね?
これからは、自分の時間も友達との時間も
大事に出来るんだよね?
そう思ったら私の心は晴れやかで、
とても清々しかった。