政略結婚ですがとろ甘な新婚生活が始まりました
『君が好きだ』


いつか言われた言葉。


あの時胸が震えたのはなぜ? 
彼の仕草や言葉に一喜一憂してしまうのはなぜ?
彼と赤名さんの関係がこんなにショックなのはなぜ?


カチ、カチとまるでパズルのピースが当てはまるように答えが自然に出る。

以前、環さんが実家に挨拶に来てくれた時の母の質問を思い出す。その質問の答えはもうとっくに出ていた。


「私は環さんが好き」


いつからだろう。

そんなことはわからない。


きっと梁川百貨店で再会した時にはもう恋をしていた。


彼のことで頭がいっぱいで、触れられた指が身体が熱をもってばかりだった。

会いたくないと思うのに、会いたくて仕方なかった。私が彼の傍にいたかった。

彼のためなんかじゃない。すべては私のためだった。私が彼への恋心を自覚することを恐れていただけだった。


最後に隆に言われた言葉が蘇る。

『彩乃なんかと付き合わなければよかった』


今ならわかる。

隆のことは好きだった。
だけどそれはとても穏やかな感情。好意を寄せてもらっていたから、大事にしてもらっていたから、恋に恋をしているような、そんな曖昧なもの。

優しくしてくれて、私の存在を認めて、話を聞いてくれたから好きになる努力をしようと思った。だけどそれは違う。

好きになる気持ちは努力するものじゃない。自分以外の誰かを自分以上に自然に大切に想うものだ。

私は隆にどれほど酷いことをしてきたんだろう。


環さんを好きになってしまった、今ならわかる。


恋をするということがどれだけ必死で覚悟が必要かということを。
傷つく覚悟、辛さも独りよがりも引き受ける覚悟。


恋は楽しいだけじゃない。嬉しいだけじゃない。

切なくて苦しくて狡くて、時に人を醜くしてしまうものだ。

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