政略結婚ですがとろ甘な新婚生活が始まりました
「え……?」

低い声が彼の口から漏れた。夜色の綺麗な瞳に浮かぶ動揺。


「私は環さんが好きです」


すう、と小さく息を吸う。
緊張で張り裂けそうな心臓を抱えて、私はもう一度震える声に力を入れて、彼に想いを伝える。


本当はずっと言いたかった。
本当は随分前からこの気持ちに気づいていた。


傷つくことが恐くて拒絶が辛くて、離れたくなくて、言えなかった。

だけど、こんな歪な関係のままでいたくない。彼と本当の意味での夫婦になりたい。彼に望まれる私でありたい。私はこの人が好きだから。

強い想いだけが、今にも崩れ落ちていきそうな私の足を必死で支えている。気を緩めたら涙が零れ落ちてしまう。こんな時に泣いていたらダメだ。

泣くなら拒絶された後でひとりきりで思い切り泣きたい。それまでは泣かない。弱い、逃げてばかりの狡い自分ではもういたくない。

彼の胸に置いたままになっている私の拳が微かに震えている。


「それは……反則だろ……」


ポツリと彼から小さな呻き声のような言葉が漏れた。

その瞬間強い力で彼に抱きすくめられた。痛いくらいの圧倒的な力で彼に引き寄せられる。


「本当に……? 本当に俺を好き?」


切なさの滲んだ余裕のない声。彼のこんな声は初めて聞く。身体ごと抱きこまれているので彼の表情は残念ながら見えない。

私は彼の胸の中で何度も頷く。


「環さんが大好きです」
「これは夢なのか……?」


呆然とした彼の声に私はもう一度伝える。


「夢じゃないです。私はあなたが誰よりも好きです」


お願いだから私の気持ちを受け取ってほしい。切なる願いを込めて想いを伝える。
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