政略結婚ですがとろ甘な新婚生活が始まりました
「……やっと言ってくれた」


喜びと安堵を含んだ声が聞こえた。彼の声がわずかに震えていた。

その瞬間私は横抱きにされて、彼に抱えられていた。


「た、環さん⁉」


振り落とされることが恐くて、私は彼にしがみつく。


「落ちたら困るから、しっかり捕まって」


先程までの弱々しい声が嘘のように、色香の含んだ声が私の耳に落とされた。
その声にゾクリと肌が粟立って、顔に熱が集まる。再び暴れだした鼓動がうるさい。

器用に彼は私が履いていたベージュのパンプスを片手で脱がせる。自身も手早く靴を脱ぎ、私を抱えたまま彼はリビングに向かう。

そしてそのままリビングのソファに座り込んだ。私を抱きしめる腕は一向に緩まない。


「……ずっと好きだったんだ」


私を自身の膝に乗せたまま、彼はそう言った。泣きたくなるくらいに真摯な目で彼が私を見つめる。

彼の綺麗すぎる顔が近づく。緊張と暴れだす鼓動で私の心臓が破裂しそうだ。

「あの日、彩乃の会社で泣いている彩乃を見た時、俺の中に感じたことのない感情が生まれた。彩乃を泣かせた彼に腹が立って彩乃を思い切り慰めたかった。俺なら彩乃を大事にして、目一杯甘やかして大切にするのにって思った。誰かをそんな風に想ったのは初めてだったんだ」

彼の言葉に声も出せずに私は目を見開く。彼のその自信に驚く。頬がカッと熱を帯びた。


あの日の彼の姿が脳裏に蘇える。

「だけどその一方で元彼氏のことで泣いている彩乃に腹も立って、嫉妬した……言い返せばいいのにと思った。彩乃のことを何も知らないのにおかしな話だけど、俺以外の男のことを考えてほしくないって思った」

「だから髪が似合っていないって……?」

私の言葉に、彼は自嘲気味に微笑んだ。
 
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