政略結婚ですがとろ甘な新婚生活が始まりました
「……彩乃の実家の事情は知っていたよ。以前に仕事が一緒になった時に、高倉さんが彩乃には内緒にしてほしいと言って教えてくれた」

彼の言葉に驚く。それと同時にいつも心配してくれる親友の姿が脳裏に浮かぶ。

彼女にはまだ正式に今回の結婚のことを話していない。彼女の思いやりに胸が詰まった。彼女にもきちんと私の気持ちを伝えよう。

「そうなんだ……眞子が……。実家のことで隆を利用して傷つけてごめんなさい」
私は彼に頭を下げた。唇をギュッと噛みしめる。

「いや、話せない状況を作った俺にも原因がある。だからお互い様だ。それと今日のことで高倉さんを責めないでくれ。彼女には口留めされていたし、彩乃を心配してのことだったから」

彼の言葉に頷く。眞子を責めるつもりなんて毛頭ない。むしろ彼女には感謝の思いしかない。

私の周囲には、私を心配して守ろうとしてくれる人がたくさんいてくれた。


「俺はお前を笑顔にしてやることができなかったから。……幸せになれよ」


隆の優しい声に涙が滲みそうになる。彼にこそ幸せになってほしいと心から願う。

私に近づいてこようとした彼の足が急に止まる。


「……大丈夫そうだな」
そう言って隆が苦笑する。

彼の言葉に違和感を感じてそっと顔を上げる。
隆の視線の行方を追う。彼は私の背後を見ている。


訝しみながら振り返ると、そこには仏頂面をした環さんがいた。限りなく不機嫌な様子が一目でわかる。身体から剣呑な雰囲気が漂っている。


「た、環さん⁉」


どうしてここに⁉ まさか話を聞いていたの?


グッと彼が私の腰を引き寄せる。背中にあたる彼の温もりにこんな状況だというのに安堵してしまう。
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