政略結婚ですがとろ甘な新婚生活が始まりました
そんなにも前から私のことを考えてくれていたの? 想っていてくれたの?


私の涙の決壊が壊れていく。
彼の想いの深さに涙が止まらない。

この人はどれだけ私に嬉し涙を流させるの。


「私を連れて行くのは気が進まないって……!」
嗚咽を堪えながら私は声を張り上げた。


「ああ、だけど一刻も早く彩乃は俺の妻だって宣言したい気持ちもあったんだ」
俺の我儘だからもらってくれないか、と彼が言う。


「サムシングブルーじゃないけど、そういうものにあやかりたかったから」


はっきりと言い切る彼は本当に王子様のようで、私の涙は益々とまりそうにない。甘い痛みが私の心を埋め尽くす。

「……気に入らないか? 彩乃を商品のモデルのように扱うつもりじゃないんだ。ただ彩乃の会社と一緒に制作しただけで」

焦ったように彼は説明してくれる。言葉を発することができない私の顔を心配そうに覗き込む。私は首を横に振る。

「ビックリして……! 嬉しくて、言葉にならないだけなの。本当にありがとう」
泣き笑いのような笑顔を返す。

本当に、この人はどこまで私を甘やかしてくれるんだろう。

彼への際限ない想いに胸が熱くなる。

私の涙をそっと骨ばった指で拭いながら、彼が安心したように微笑む。その笑みが眩しくて私は目を細める。

彼はそれから少し言いにくそうに話す。

「今回のことで彩乃の会社の上層部には彩乃と結婚したことを伝えた。もちろん正式に発表するまでは黙っていてもらうようにお願いしている。勝手なことをしてすまない」

「ううん、いいの。だって私のためでしょう?」
そう、彼は私が嫌がること、不利益になることは絶対にしない。今はそのことを全力で信じることができる。きっと私の会社での立場を考えてくれてのことだろう。

いずれは会社に話さなければと思っていた。
そこにこだわりは、もうない。今の私は彼と策略結婚をしているわけではないから。
< 150 / 157 >

この作品をシェア

pagetop