政略結婚ですがとろ甘な新婚生活が始まりました
明るい照明に照らされて輝くドレスは本当に綺麗で、溜め息が漏れる。

こんなことをやってのけるこの人は本当に偉大で、その思いつきも実行力も到底真似できない。

「彩乃? どうかしたか?」
環さんが私に話しかける。

「ううん、環さんはすごいなあと思って……」
何が?というような表情を浮かべて、彼が私に先を促す。

彼は私を問い詰めるようなことはしない。私が自分の意見を話せるまで待ってくれる。

彼は口数は決して多くないし、必要最低限の単語しか話さない時だってある。その短い言葉の中に思いやりや優しさをたくさん詰めてくれている。私に向ける彼の目はいつだって甘く優しい。


「環さんは立派に会社を守っていて、社員の皆さんにも慕われていて、しかもこんなにも素晴らしいドレスも贈ってくれて……それに引き換え私は全然ダメだなあと思って。自分に自信もないし未熟で何もできない。こんな私が妻だなんて……」

まるで僻んでいるみたい。こんなことを言いたいわけじゃないのに。こんな風にしか言えない自分が情けない。

彼に似合うよう、釣り合うようになりたいと思っている。その努力なら惜しまずにしたい。でもどうしていいかわからないし、付け焼刃ではとても無理だ。

すぐに諦めそうになる自分が情けなくて嫌になる。

「環さんの隣に立っても恥ずかしくない妻になりたいのに。皆に認められるようになりたいのに」

ああ、ダメだ。泣きたくなんてないのに、目の前が先程とは違う意味の涙で滲みだす。こんな私は本当にどうしようもない。


王子様のような彼に似合うお姫様に私はなれそうにない。


「環さんは本当に王子様みたいなのに……私は……」
私の情けない話を黙って聞いてくれていた彼が小さく呟く。


「王子には姫を選ぶ権利はないのか? 王子ひとりでは国を治められないぞ?」
茶化すような声にハッとする。
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