政略結婚ですがとろ甘な新婚生活が始まりました
「彩乃はこれから仕事、続けるの?」
旦那様が拍手に応える姿を目で追いながら、眞子が私に尋ねる。

「環さんは私の好きにすればいいって言ってくれているから、しばらくは続けようかなと思うのだけど……色々な勉強もしたいからもう少ししたら答えを出すつもり」

そう、今後私が働くことも彼は何ひとつ反対しなかった。むしろそのほうが私からいいアドバイスがもらえると言っていた。

彼とあの日、思い付きで話した『お姫様プラン』はまだ試作段階だけれど、発表した途端に好評を得ている。今は試験的にまずは梁川百貨店ではじめてみようかという話も出ているくらいだ。

「まあね、辞めるのはいつでもできるから。それに引継ぎもあるしすぐに辞めるわけにもいかないもんね。今日私と上層部以外は彩乃の結婚を知らないでしょう? さっきも先輩にあの女性は鳴海に似てないか、とか言われて焦っちゃった! 皆が驚く顔が楽しみ!」

そう言って眞子が朗らかに笑う。
私は小さく笑んで、壇上で滑らかに話し出す夫の姿を見つめた。


相変わらず見惚れてしまうくらいに完璧な容姿。サラサラの黒髪に引き締まった体躯。見る人を惹きつける漆黒の瞳。そして何よりも決めたことを実行できる有能さ。

あんなにも素敵な人が私の旦那様だなんて今でも信じられない。でも彼を見るだけでドキドキと速くなる私の鼓動は確実に彼への想いを物語っている。

彼と私の左手薬指にはパーティーにぎりぎりで間に合った結婚指輪が輝いている。


『俺と彩乃を繋ぐ証だから。彩乃への想いを形にしたものだから』


照れることなくそう言って、彼は届いたその日から指輪を外すことなく身に着けてくれている。


「ここでひとつ皆様にご報告したいことがあります。私事ですが、私、梁川環はこの度、鳴海彩乃さんと結婚いたしました。彼女は私にはもったいないくらいに聡明で素晴らしい女性です。彼女を私は心から愛しています。彼女と共にこの梁川百貨店を守っていきたいと思っています」
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