政略結婚ですがとろ甘な新婚生活が始まりました
サーッと血の気が引いていく。
恥ずかしさととんでもないことをしでかした恐怖が私を襲う。
「ご、ご迷惑をおかけしてすみません。すぐにどきますから!」
急いで立ち上がろうとする私の身体がふわりと浮く。
え……?
「焦ったらまた転ぶ」
低い声が耳朶に響く。
彼が私の両脇を優しく抱えて傍に立たせた。それから彼もスッと立ち上がる。
カアッと私の顔が情けないくらいに真っ赤になる。心臓がドキドキと速いリズムを刻む。
「あのっ、本当に申し訳ありませんでした」
スーツについた埃を軽く払っている彼に、再び頭を下げて謝罪する。私はさっきから醜態ばかり晒している。
「気にしなくていい、名前で呼んでくれるなら」
相変わらずの軽口をたたかれて、真っ赤な顔を上げて反論する。もう本当に泣きたい。
「呼びませんっ」
先程のようにクスクス笑う。その笑顔が優しくて、それ以上何も言えなくなった。
その時彼のスーツから、小さな電子音が聞こえた。
彼はスーツの胸ポケットに手を入れてスマートフォンを取り出す。今日身に着けているスーツと同じ真っ黒な機種。
「あ、あのお忙しいでしょうしこれで失礼します! 色々ありがとうございました」
これ幸いと肩にかけたバッグを強く握りしめて、ぎこちなく足を動かす。
「見合いはやめろよ? 絶対にうまくいかないから」
スマートフォンの画面に目を向けながら、失礼なことを平気で口にする。
「あなたにそんなことを言われる筋合いはありません!」
少し離れて叫ぶと、彼はまたクスクス笑う。
恥ずかしさととんでもないことをしでかした恐怖が私を襲う。
「ご、ご迷惑をおかけしてすみません。すぐにどきますから!」
急いで立ち上がろうとする私の身体がふわりと浮く。
え……?
「焦ったらまた転ぶ」
低い声が耳朶に響く。
彼が私の両脇を優しく抱えて傍に立たせた。それから彼もスッと立ち上がる。
カアッと私の顔が情けないくらいに真っ赤になる。心臓がドキドキと速いリズムを刻む。
「あのっ、本当に申し訳ありませんでした」
スーツについた埃を軽く払っている彼に、再び頭を下げて謝罪する。私はさっきから醜態ばかり晒している。
「気にしなくていい、名前で呼んでくれるなら」
相変わらずの軽口をたたかれて、真っ赤な顔を上げて反論する。もう本当に泣きたい。
「呼びませんっ」
先程のようにクスクス笑う。その笑顔が優しくて、それ以上何も言えなくなった。
その時彼のスーツから、小さな電子音が聞こえた。
彼はスーツの胸ポケットに手を入れてスマートフォンを取り出す。今日身に着けているスーツと同じ真っ黒な機種。
「あ、あのお忙しいでしょうしこれで失礼します! 色々ありがとうございました」
これ幸いと肩にかけたバッグを強く握りしめて、ぎこちなく足を動かす。
「見合いはやめろよ? 絶対にうまくいかないから」
スマートフォンの画面に目を向けながら、失礼なことを平気で口にする。
「あなたにそんなことを言われる筋合いはありません!」
少し離れて叫ぶと、彼はまたクスクス笑う。