政略結婚ですがとろ甘な新婚生活が始まりました
母と同じで恋愛至上主義的なところがある叔母はその話にいたく感動し、一気に顔を輝かせた。

「彩乃ちゃん、本当に了承したの!?」

キラキラと期待に満ちた目で叔母に問いかけられて、私はちらりと正面に座る彼を見る。

彼は満面の笑みを浮かべている。その温度を感じさせない笑顔が恐すぎる。


「う、うん。とりあえずはお付き合いから……」
「できれば入籍だけでも先に済ませたいと思っています」


とりあえずはお付き合いをしてみて結婚はまだ先にしたい、と言い逃れをするつもりだった私を見透かすように彼が言葉を続けた。

ちょっと待って! どうしてそんな急展開になるの!? 結婚するとはきいたけど、すぐに入籍するとはきいていないのに!

「まあっ、そうなの? なんて素敵なの! まずは妹たちに報告してそれから梁川さんのご家族にもご挨拶しなければ」
うきうき弾む叔母の声。

なぜか上機嫌な様子の彼に、叔母は嬉々として今後のスケジュールを話している。私は完全に取り残されてしまっている。

この後仕事があるという彼は話がまとまったせいか、満足そうな表情を浮かべて席を立った。今後のことについては、お互いに連絡を取り合い相談することで決まった。

「すみません。それではこれで失礼します。彩乃、送れなくてごめんな」

ふわりと私に甘い笑顔を見せて、彼はそっと私の頭を大きな手で優しく撫でた。

「えっ、あ、ううんっ」

不意打ちの出来事に私は真っ赤になってしまう。

今の笑顔は何!?

一気に心拍数があがる。頬に熱が集まってくる。

しかもどうしていきなり名前を呼び捨てるの? さっきまで『君』扱いだったのに。

いきなりの親密さに心が追い付かない。

「随分仲良くなったのね」と叔母は嬉しそうに目を輝かせている。そんな私の胸の内をあざ笑うかのように、颯爽と彼はティーサロンを出て行った。しかも会計まで済ませているあたり、ソツがなさ過ぎる。
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