政略結婚ですがとろ甘な新婚生活が始まりました
「特定の恋人はもう何年もいない。浮気云々については同感だな。俺も妻になる女性に浮気されたくない」
彼にしては珍しく率直な答えが返ってきた。

「そう、ですか」
そう言われてしまえば私が彼の申し出に反対する要素がない。しいて言えば彼が苦手ということだけだ。

「お互いに想う人ができてしまったなら、その時は正直に言って話し合えばいいだろ?」
簡潔に言われて思わず頷いてしまった。

「決まりだな」
さっきまでの冷たい笑みはどこへやら。彼が嬉しそうに破顔した。その無邪気ともいえる眩しい笑顔に思わず一瞬見惚れてしまう。

「ちょ、ちょっと待ってください! 今のはナシです!」
ハッとして、往生際悪く言い訳しようと立ち上がった時、少し離れた場所から私の名前が呼ばれた。


「彩乃ちゃん!」
「叔母さん?」


こちらに向かって早足でやってくる叔母の顔色は悪く、困惑が浮かんでいる。

叔母が大きな声を出すことは珍しい。きっと実家に連絡をとって、今回の見合いが破談になったことを知ったのだろう。

すかさず彼が立ち上がり、私の目の前に移動する。

「彩乃ちゃん、落ち着いて聞いて頂戴ね……あら、梁川さん?」

私の席までやってきた叔母は彼に気づき驚きの声を上げる。どうやら叔母は今回の件に彼が絡んでいることを祖母から聞いていない様子だ。

「こんにちは、佐築様。私からご説明したいことがあるのですがよろしいですか?」
誰をも魅了するような笑みを浮かべ、彼は叔母を私の隣の席に座るように促す。

それから今回の見合いが破談になったいきさつをよどみなく話す。先日百貨店で私に一目惚れをしたのだと照れもせずに言う。さらには今回の見合いの件を相良さんから聞き、ここに駆け付けたのだと情熱的に語った。

彼は私に結婚を前提とした付き合いを申し込み、たった今私から了承を得たことまで話した。さらには祖母の体調までも気遣ってくれた。
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