政略結婚ですがとろ甘な新婚生活が始まりました
「確かに彩乃の性格を考えたら悩むのもわかるけど、一生にそう何度もあることじゃないから、自分の直感に従うんじゃないの？　結婚する時に相手が正しい伴侶だなんて確信を持っている人なんてほとんどいないわよ。そんな確信持ってたら、世の中の離婚率はもっと低いはずでしょ」

私の悩みに彼女は明るく答える。

「何が正しいかなんてその時と場合によってかわるわよ。彩乃は難しく考えすぎなの。飛び込んでみなきゃわからないこともあるよ。しかもあんなにイケメンセレブなんだよ？　何が不満なのよ、私からしたら羨ましいくらいだけど」

どこかで耳にした意見だ。
その茶化したような言い方に私は小さく笑う。

脳裏に彼の完璧な美貌が浮かぶ。

「……彩乃がショックを受けるかもしれないと思って話してなかったことがあるの。つい最近聞いた噂だけど……飯野さん、最近婚約したらしいよ」
一転して雰囲気を変えて真面目に話す眞子。

隆が婚約？　まさか別れる時に言っていた好きな人と？

眞子の言葉が頭の中でぐるぐる回る。

「彩乃、大丈夫？」
眞子が私の名前を呼ぶ。

「だ、大丈夫。びっくりしただけ」
眞子に向けた笑みはぎこちないものになってしまった。

　……これはきっといいことだ。隆には幸せになってほしい。

「黙っててごめん。噂だから伝えることを思案していたんだけど、彩乃にも入籍話がでてるならと思って……ねえ彩乃、皆そうやって前に進んでるの。彩乃もそろそろ前に進むべきじゃない？」

眞子が諭すように私に告げる。
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