政略結婚ですがとろ甘な新婚生活が始まりました
その後も室内の設備等について赤名さんは丁寧に説明をしてくれた後、部屋を出ていった。

赤名さんが誰を想っていようと、私がとやかく言う権利なんてない。環さんの赤名さんへの気持ちもわからない。

私と彼はお互いのメリットのために結婚をした。
きっと彼の秘書である赤名さんはそのことを知っている。

私には関係のない、入り込めない世界と時間がふたりの間にはある。単なる策略結婚の私が踏み込める領域ではないし、そんなことを気にする必要なんてない。

わかっているのに、どうしてこんなにも息苦しく胸が痛くなるのだろう。
妙なわだかまりだけがいつまでも膿のように心の中に残っていた。

シンとした部屋の中で私は赤名さんが持って来てくれたお弁当を取り出す。カサカサと包みを開ける音がやけに虚しく響く。

お弁当には色とりどりの野菜が入っていて、とても美味しそうだった。

けれど食欲はわかず、私はお弁当に少ししか手をつけることができなかった。小さく息を吐いて、開けたばかりのお弁当の蓋を閉じて冷蔵庫に収納した。


今日はもう寝てしまおう。明日は休みだし、ほかの片づけは明日にしよう。


無理やり自分を納得させて私は自室に引き上げる。広い家にひろがる静寂が胸に押しかかる。

孤独感に押しつぶされそうになる。自室までの距離がとても長く感じられた。

機械的に、収納したばかりの引き出しから部屋着を取り出し、赤名さんに教えてもらった洗面所に向かう。

広いその場所にはバスタオル等の必要なものが揃えられていた。勝手に使用することに後ろめたさを感じつつ、落ち着かない気持ちを押し殺して、入浴を済ませた。


私は部屋に置かれた赤いソファにうずくまり、着てきたコートを肩にかけて色々なことから逃げるように目をギュッと閉じた。


それでもなかなか眠りは訪れなかった。
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