政略結婚ですがとろ甘な新婚生活が始まりました
当主の主な仕事は地所の管理だ。

母はのんびりとした性格で『澤井家』というものにそれほど執着も気負いもない。一応長子が代々、澤井家の当主になるという決まりがあるそうだが、婿養子をとらず嫁いでもよいという。

実際に母は一般家庭の鳴海家に嫁いだ。父は飲料会社に勤務する普通の会社員だ。

現在は祖母が暮らす本邸と同じ敷地内に鳴海家の家が建てられている。

ほかにも都内には別邸があり、そこには現在、母親の姉である叔母夫妻が住んでいる。叔母夫妻にはひとり娘の未歩(みほ)さんがいるのだが、数年前に結婚し、ご主人の仕事の都合でロンドンに住んでいる。

幼馴染である眞子は、我が家のこういった事情を熟知している。私が就職し、ひとり暮らしを希望した時、祖母は大反対をした。

眞子と同じ会社だと説明しても聞く耳すらもたなかった。母も就職はしたのだが、祖母が薦める会社で、実家から通っていた。

祖母は成人した娘は早く結婚することが何よりの幸せだと考えている。大学を卒業したのなら花嫁修業をして、できるだけ早く結婚しなさいと口癖のように言われ続けた。

何度も祖母に説明をして、眞子にも加勢してもらって、三十歳になるまでに必ず結婚するという条件つきでやっと就職とひとり暮らしを許してもらえたのだ。

現代において本当にありえない条件だけど、これ以外に実家から出る方法がなかった。
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