一途な騎士はウブな王女を愛したくてたまらない
騙されたことへの苛立ち。
守るべき者を守れなかった後悔。
それぞれに様々な思いを抱えている彼らの様子を、メアリは緊迫した面持ちで見つめる。
(確かに、罠である可能性はゼロじゃない……でも……)
フォンタナといえば、メアリが生後預けられた修道院があり、そこで働くイアンの妹が住んでいる町だ。
自分が世話になった町が戦場になるかもしれないことに、メアリは心を痛め唇を軽く噛む。
その横に座っているイアンは、皆の話をひと通り聞くと唇を動かした。
「目的がどうであれ放っておくことはできない。オースティンは王立騎士団を率いてフォンタナに向かってくれ」
斥候の報告ではヴラフォス軍は千に満たないことを続けて告げると、オースティンは腕を組んだ。
「フォンタナの兵は五百ほどだったか」
オースティンの呟きに、ルーカスやユリウスらが頷く。
アクアルーナの盾である王立騎士団と王女の剣と誉れ高き近衛騎士団。
彼らもやられっぱなしで黙っていたわけではない。
いつヴラフォス帝国が動いてもいいようにと各地で軍を動かす準備はしていた。
ギルドでは傭兵を募集し、必要な補給物資も手配済みだ。