一途な騎士はウブな王女を愛したくてたまらない


フォンタナの南、王都アクアルーナとの中間に位置する町【セリニ】からの補給物資も要請する方向で話がまとまりかけた時、メアリは疑問を払拭すべくイアンを見た。


「あの、イアン様は?」


調印式の時のように、オースティンや王立騎士団の者たちとフォンタナに向かわないのか。

そう尋ねたメアリに、イアンは当然のように「いいえ」と答える。


「私はあなたと共にここに残ります。戴冠式もありますから」

「ダメですよ。フォンタナへ行ってください」

「理由を伺っても?」


モノクルから伸びる細い金色の飾りを揺らしながら、イアンはメアリを見つめ返した。


「フォンタナにはあなたの妹さんがいます」

「……それがなにか」


イアンは視線をメアリから外す。

それが、自らの事情や気持ちよりもなすべき仕事を優先しての態度だとメアリは感じ取り、気遣うように微笑んだ。


「どうか、そばで守ってあげてください」

「私はあなたを支える役目がありますから」

「じゃあ、私もフォンタナへ行きます!」

「……は?」


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