一途な騎士はウブな王女を愛したくてたまらない
「驚かせてごめん」
見慣れた騎士服や鎧を纏ってはいないが、聴き馴染んだ穏やかな声で謝罪されたメアリは、その者の登場に驚き過ぎて意味もなく口を開いては閉じる。
「ユ、リウス?」
ようやく紡いだ名に、藍色の髪を窓から吹き込む風に靡かせたユリウスが微笑むことで答えた。
剣から手を離し、今度はユリウスへと駆け寄ったメアリは、感極まって勢いよく抱きつく。
「良かった……! 戻ってこなかったから凄く心配してたんです!」
無事で本当に良かったと喜ぶメアリを、ユリウスは優しく包むように抱き締め返した。
「ごめん。心配かけて」
「怪我はしてませんか?」
あの戦いの後だ。
もしかしたらと考えて問いかけたメアリだったが、ユリウスは緩く首を振った。
「どこもないよ。ありがとう」
答えて、メアリの細く柔らかな髪を撫でる。
「それより、メアリ。俺との約束を覚えている? 君が俺の願いを叶えてくれるっていうやつを」
耳元で甘えるような声で確かめるユリウスに、メアリは頬を赤く染めた。