一途な騎士はウブな王女を愛したくてたまらない


ユリウスが無事に戻ってきたことに歓喜し、抱き締めたのは自分からだが、まさかこんな風に甘やかな雰囲気になるとは思わなかったのだ。

胸を高鳴らせながらも、ユリウスと交わした約束を思い出したメアリは「も、もちろん」と彼の腕の中で小さく頷く。

ユリウスが指す約束とは、以前二人で城を抜けた際のものだ。

何度も世話になったお礼をちゃんとしたいと口にしたメアリに『それなら』とユリウスが頼んだこと。


『近いうちに俺の願いを叶えてもらおうかな』

『願い、ですか?』

『そう。簡単な願いだけど、今はまだその時じゃないんだ。だから、必要になったらぜひ協力してほしい』


メアリは簡単なものならばと、快諾したのだ。

ユリウスはメアリが覚えていてくれたことに安堵し「良かった」と零してから、腕の力を緩めてメアリを見つめる。


「今、叶えてもらいたいんだ」


恋愛経験に乏しいメアリは、間近にあるユリウスの端整な顔を恥ずかしくて見ていられず、思わず視線を落とした。


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