一途な騎士はウブな王女を愛したくてたまらない


さっきの会話は何なのか。

イアンたちの元に謝罪に向かったようだが、あとはメアリ次第というのは何を指しているのかわからない。

これから説明を受けるのかもしれないが、気になって仕方がないメアリは、半歩先を歩くユリウスの背を見て怪我のことを思い出した。


「ユリウス、傷は大丈夫なの?」

「ジョシュア先生のおかげでね。ああでも、そろそろ薬を塗らないといけない時間か」


痛みがないわけではないだろうが、やはり傷が深くなかったことが幸いだったのだろう。

辛そうにしていないことに安堵したメアリは、自分の背中に薬を塗るのは大変だろうからと、手伝わせてと口にした。


「ありがとう。じゃあ頼むよ」


メアリの手を握ったまま、廊下を進んで自分の部屋に案内したユリウスは、ジョシュアから貰った塗り薬をメアリに手渡してシャツを脱ぐ。

線は細いが筋肉のしっかりついた身体が露わになり、メアリは思わず視線を外した。


(今まで治療でたくさんの人の身体を見てきたのに。ユリウスの身体だってアクアルーナにいた頃、ジョシュア先生が治療する際に目にしたこともあったのに)


なぜ、こんなにも胸が騒がしくなるのか。


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