甘く抱いて、そしてキスして…【完】
私はちょこちょこと動きながら、美味しそうにひまわりの種を食べてるクルミをじっと見ていた。
うふふっー確かに可愛い。癒される。


樋口さんはすでに階段を降り、仕事に戻っていた。

私は、クルミのいる部屋を隅々まで見渡した。キッチンには食器が山積み、床は髪の毛やら紙くず、ほこりでいっぱい。

「1階は塾、2階は自宅ってことかぁ……それにしても汚い。掃除機ないかなぁ…」


私は、左側に見えたクローゼットから、掃除機を見つけた。

よし、片付けよ。


どれだけ掃除してないんだ、これじゃあ、スーツも汚れるわ…

あらら、洗濯もたまってる。



もう全部綺麗にしちゃえー



私は、部屋、洗面所、風呂、キッチンの掃除と片付け、洗濯、出来ることは全てやってしまった。



ああ、汗かいちゃった…
ふと、時計を見ると、なんと11時40分…

や、やばい、終電間に合わない。



「冷たっ」



「お疲れ様、サンキュー」
樋口さんは、背後から、突然私の頬に缶ビールを当てて、そう言ってきた。



「あ、あまりにも汚くて、あ、すみません、つい片付けちゃいました。」


「いいんだよ、ここ今日から君の家、ほら、ビール飲もう。この出会いに乾杯!」


「あ、あの、終電がなくなってしまった…あと、私はビール飲めなくて…カクテルしか…」


「終電?もう必要ない。何度も言うけど、
今日からここに住んで、俺の仕事手伝え、特別に秘書っていう肩書きつけてやる。」


「…」
何を言ってんだ、この人、それにしても、困ったなぁ…
タクシーで帰るしかないか…



「ねぇ、クルミって呼んでよい?」


「へ?」


「俺の事は、塾では、塾長、家では、翔太郎でよいから」

そう言いながら、もう酔っ払ったのか、彼は顔を近づけてきた。
そして、突然、私の両頬に手を当てた。






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