とろけるようなデザートは、今宵も貴方の甘い言葉。
「ありがとうございます」
「こちらこそです。今日はとても楽しみで――」
二人で微笑みながら進んでいると、空気を切るような車のドアの開閉と、大声で怒鳴る声と制止する声が聞こえて、麗一さんが足を止める。
「……あれは。きっと喬一くんたちの従兄弟の左京くんかな」
「声だけで分かるんですね。よく来られるんですか」
「うーん。そうだね。左京くんはとても良い子なんですよ。ただ新しい事業の資金援助に、彼のご両親が」
苦笑いしながら、ようやく到着した本家の台所へ。
もう使われていない石窯の上に野菜の入った段ボールが置かれる。
本家だけあってどこかの割烹料理屋のように広い台所だ。意外にも、オール電化なんですよーと八つあるコンロ部分を見せてくれた。
「あーも。麗一くん、塩。塩を持って来てちょうだい!」
「お姉さん、あの、あけましておめでとうございます」
今のタイミングでいいのか一瞬焦ったけど、控えめな桃色の着物姿で現れたお姉さんは血管が浮き出たこめかみをぴくぴくさせながら、塩の塊を持とうとしていた手を止めた。
「わーお。紗矢さん。今年も喬一共々よろしくお願いいたしますね。ごめんね。嫌なタイミングで嫌な客が来たから、塩をぶつけてくるわ。うちの両親がお得意様と二階のギャラリーの方で談話してるときに、ほんと、嫌な客」
「雅、やめてくれよ。塩の塊を二袋も持つなんて何を考えてるんだ!」
「えー、これぐらい平気よ。投げたら軽くなる」