とろけるようなデザートは、今宵も貴方の甘い言葉。
お団子頭に結んだ髪は全く乱れていないし清潔感が漂い、すらりとした高身長でパンツスカートが良く似合い、意志の強そうな凛々しい眉に自信がないとつけられないような真っ赤なルージュ。
とても目立つ方なので私も覚えている。ので、すぐに取り繕って微笑むことができた。
「お久しぶりです。日色さん。お世話になっております。前を通ったものですから、つい建物を眺めてしまいました」
ここの外科医さんだ。兄が、喬一さんが前の職場から引き抜いた女医だと紹介してくれた時がある。確か喬一さんより数歳年上だと言っていたっけ。
社交辞令だけで逃げろうとしたら、フッと笑われ私も笑顔が固まる。
「大丈夫です。院長から聞いてますよ。ご結婚おめでとうございます」
「え、あの、まだ、結婚はしていません」
しどろもどろになっていたら、不思議な顔をされた。
「そうなの? 院長が可愛いお弁当箱を使っているからどんな恋人がいるのかなってずっと気になっていたのよ」
「可愛いお弁当箱、ですか?」
「そう。紫色の水玉模様のお弁当箱。本人の趣味ではないって思ったんだけど」
「紫色……」
「年季が入ってるから、数年はお付き合いしてたんじゃないかなって思ってたんだけど、勘が外れたかしら」