とろけるようなデザートは、今宵も貴方の甘い言葉。
でも先日の落ちてきそうな満月の夜。初めて喬一さんに触れてしまったせいか、画面越しの恋人ではもう満足できない、我儘な女になってしまったに違いない。
猫かねずみか、はたまたウサギか。小動物が小さくかみついたような下弦の月。
その月を眺めながら、医院の後ろにある家へ向かう。
そびえ立つブロック塀を見て分かる豪邸に、息を飲む。
実家とそう変わらない。いや、新築な分、こちらの方が綺麗だ。
オートロックを解除して重たい門が自動で開くと、芝が生えた庭には、椿と桜の木、そして小さな池には水が張っていないようだった。リビング前の花壇も何も育てていないまま、土が入っているだけ。
庭だけでもこんなに広いのに、開業したばかりの喬一さんが手入れできるわけないよね。
私がするのかな。……できるかな。
門がゆっくり重たい音を響かせながら閉まるので、玄関へ向かう。