とろけるようなデザートは、今宵も貴方の甘い言葉。
こちらもオートロックを解除すると、目の前に飛び込んできたのは水墨画の薔薇。
真っ赤な額に飾られて、壁にかけられた黒の濃淡だけで描かれた薔薇を見つつ、季節の大輪が彫られた屏風の向こうの廊下へ向かう。
リビングは二階までの拭き向けになっている。その壁に埋め込まれた窓はカーテンで覆われているがカーテンを開けたら庭がどの部屋にいても一望できるようになっているようだ。
まるでモデルルームのような室内に、変な汗が出てしまう。
もっと狭い空間はないのかな。私は、ソファで寝転んで横目でテレビさえ見れれば、こんな広い部屋じゃなくても一向に構わないのに。
『廊下は段ボールがあるから動きずらいかもしれない。君は一番日当たりのいい奥の部屋を使ってほしいな』
そう言われていたので、二階へ向かう。
まだ家の片付けが終わっていないらしい。段ボールが壁に並べられている。
奥のベランダへ続くホールには、グランドピアノまで置かれている。が、ピアノの下は段ボールだらけ。
やっぱり仕事が忙しのかな。私で良ければできる片づけは一緒にするのに。