とろけるようなデザートは、今宵も貴方の甘い言葉。


 あまりじろじろ家の中を見るのも失礼だろうと、そそくさと一番奥の部屋へ入った。

 何もない、真っ暗な部屋。電気をつけると、使っていないのか少しだけ空気が籠った匂いがする。
 でも、広い。お兄ちゃんの家のリビングがすっぽり入るぐらいはあるかな。
 私の一人暮らしの荷物を全部そのまま持って来て置いても、全然空間が埋まらない。
 自分の部屋なのに落ち着かないってどうしよう。
 いや、まだ、自分がここに住むかもわからないし。
 本当に住めるのか現実感が全くない。

 それにお弁当を毎日作ってくれる、数年付き合っている彼女もいるかもしれない。

「紗矢、二階にいるの?」
「え、喬一さん、もう帰って来たの」

 足音がして慌てて部屋から飛び出して二階から見下ろすと、スーツのジャケットを腕にかけた喬一さんが、私を見上げて笑っている。

「ただいま、紗矢。夜勤から自宅待機に変わったんだ」

「えーー……。おかえりなさい」
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