Jelly
「妥協点を探して期限で仕上げるのがプロの仕事だと思っています。認識齟齬をなくして一応は今の方向で折れてもらってるので、もう一度話をひっくり返したくはないんですよね。完全に信頼を失ってしまう」

「でも……、それじゃクライアントは――」

 みんなの注目が集まるほどに言葉が出てこなくなる。俺がそのまま黙り込むと、社長からの追い討ちがかかる。

「成澤はどうやって納期に間に合わせる? 今まで九十日かけてやってきて、残りは三十日。単純に見積もって、ゼロから作るなら今までの四倍の仕事量になるけど。楽天主義は成澤の良いところだけど、仕事じゃ人を動かせない。どうするのかを示さないと」

 安藤さんも、チームのみんなも頷く。

 みんなだってこのままで良いって思ってるはずないのに、誰も何も言わない。……でも、俺もそうだった。神長に指摘されるまでは。
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