Jelly
「見えない部分までちゃんと仕上げるのがプロの仕事じゃないんですか。本当に満足してもらえるシステムを作れなかったら意味がないと思います。プロジェクトを絶対に失敗させたくありません。……採算度外視とか、だめですか」

 社長は腕組みをして、ゆっくりと息を吐き出す。俺の次の言葉を待ってる。

「今のままじゃ、仕上がっても今後一切いじれないシステムになります。『システムが完成したら後のことは知りません』なんて無責任なものを本当に作ってしまっていいんですか。

安藤さんがクライアントと話を詰めてくれたのなら、それを最終案として、今後テスト動作なしでもう一度基本に立ち返って一気に最後まで作ったらどうですか。

ミーティングやテストが途中に挟まらない分、作業に集中できるし。今、結果的に回り道になってしまっている工程を省ければ時間は短縮できます」

 一瞬、しん、と場が沈黙した。
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