Jelly
「今、『神奈川の海で何を見るんだ』って思ったでしょう。……実は俺も去年友人から聞いたとき、同じこと思ったんだ。でも毎年夏には熱帯魚がけっこういるみたい。黒潮の海流に乗って来るらしいですよ」

「へえ、そうなんだ」
 言葉ではさらっと返してくる割には、新しいことに興味津々といったかんじだ。実際に熱帯魚を見たら、どんな反応をするだろう。そう思うと同時に、口が勝手に誘ってた。

「潮溜まりにもいますよ。良かったら一緒に行きますか?」
「え」

 すっきりした奥二重の目が、大きく見開かれた。そんなタイミングでちょうど快特が来た。
普段なら、こういう場所で知らない誰かと話をしても、五分もすれば忘れてる。そうやって今まで、たくさんの人とすれ違ってきたはずなのに、それが出来なかったのはたぶん――

 この人の目に映る無邪気な好奇心が、胸がいっぱいになるような、最高の出来事を連れてきてくれるっていう予感があったから。

「あ、来た。乗りましょう」

 行き先がたまたま一緒なのか、それとも迷った末に興味が勝ったのか。俺の後にすんなり付いてくる。

 二列シートに横並びに座る。窓の景色がゆっくりと海に向かって走り出した。

Thank you for reading,see you next story.
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