Jelly
片足が裸足のまま情けなくホームを歩いて、ひっくり返ったビーチサンダルを足にかける。心配そうに俺を見ていたその人は、口元にちょっとだけ笑みを浮かべた。バツの悪さもあって俺もつられたように笑うしかなかった。

「友達との待ち合わせに間に合わないかと思ったら、テンパッちゃって」
「次ちょうど快特くるよ、三崎口行きの」

 きちんとアイロンのかかった半袖シャツと、控えめにロールアップされた綿パンツ。この人の雰囲気や穏やかな話し方がそうさせるのか、変に昂っていた俺の気持ちも少しずつ落ち着いてきた。

 何も考えずにあのまま電車に乗ってたら、どれだけ時間をロスってたか。

「……ああ、良かったあ。日が落ちちゃうとシュノーケリングしてもイマイチだから、早く着きたくて」

「シュノーケリング? 三崎口で出来るの?」
 その人は子供みたいに好奇心に満ちた目で訊き返してきた。

 そっか。多分知らないんだ。夏には三崎で熱帯魚が見られるってこと。
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