ビーサイド

「涼。ちゃんとして」

そのとき手に懐かしい温もりがした。

「もう間違えちゃいけないよ。ちゃんと言うの、できるとかできないとかじゃなくて、やるんだよ」

諭すように優しく、でもまっすぐに俺を見つめるその目は、俺が大好きだった若菜の力強い目だった。

“もう間違えちゃいけない”、それは俺が前に間違えたってことなんだろうか。
俺が間違えたから、若菜はいなくなった?

「タクシー来たって!」

たぶんきっと先輩の声がして、俺と理久はそのタクシーに飛び乗った。

流れる景色をぼーっと眺めながら考えていた。

俺が間違えてばっかりいるから、俺の大切な人はいつもいなくなってしまうんだろうか。

若菜にしたこと、朱音さんにしたこと。
どれが間違いだったのか、やっぱり俺にはわからない。

「…なぁ。俺そんな間違ってんのかな」

呟くように投げかけた言葉に、理久は少し息を漏らして、

「自分に聞いたら?今どう思ってんの?」

そう言った。

そんなこと言われたって、わかんねーんだよ。


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