ビーサイド

飲み会の終盤、俺もそれなりに酔いが回ってきた頃。
同じ打ち上げに参加していた理久が、物凄い形相でこちらに寄ってきて、俺の肩を掴んだ。

「涼!」

そして衝撃的なことを告げる。


「朱音が事故に巻き込まれたって、いま真由子ちゃんから電話あって、とにかく行こう」


理久も相当に慌てているのだろう。
普段はおっとりした喋り方なのに、息つく間もなく話し続けた。

「……え?事故って…朱音さんが?なんで?なんの?」

「いいから。早く病院行こう」

状況を把握できていない俺の手を理久が引っ張る。

だんだんと視界が白くなっていく感じがした。

息も上手く吸えない。

「涼!!しっかりしろって!」

慎太郎まで大きな声出して。

今、俺、そんなにやばい感じになっているんだろうか。
それすらわからない。

失いたくない。
朱音さんを失いたくない。

「……まじかよ…」

気付いた時にはもう遅かった、なんてよくある話だけど、こんなのなにかのドラマだろ。


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