ビーサイド
あの事故は、後から聞いた話によると、よく聞くブレーキの踏み間違いってやつで軽トラックが店内に突進してきたらしい。
スピードがそこまで出ていなかったためか、幸いにも怪我人だけで済んだようだった。
私は押し寄せた商品棚に頭を打って気を失ってしまい、救急車で運ばれたが、幸い検査結果にも異常がなく、何針か縫うだけの軽い怪我で済んだ。
それと引き換えに涼くんが手に入ったと思えば、まぁ結果オーライだ。
周りが心配するほど、私はまったく落ち込んでいなかった。
あれから涼くんは、年末年始はライブのスケジュールが詰まっており、やっと落ち着いたと思ったら、今度は自分たちの新しいアルバムのための制作活動で、なかなかゆっくり会えない日々が続いていた。
私もまた、あれから保険の手続きだとか警察に当時の状況を聞かれたりだとかでバタバタしており、すっかり引越しまで手が回っていなかった。
そうこうしているうちに、気付けばあっという間に3月。
もう春の匂いがしていた。