総長さんが甘やかしてくる②(※イラストあり)
あまりにも現実味がなさすぎて、ここ数日の出来事を含め、全て夢の中の話だったのではという気にさせられる。
だけど、ここは、たしかに現実なのだ。
正気を保て。
考えろ。
この先、どう生きていけばいい?
そのとき。
幻さんと、目があった。
(……このひとと、ずっと一緒にいたい)
「ユウちゃんが渋谷にいたことを証言していた、あの男に見覚えはある?」
「いえ」
「だろうね。あの時間、駅前にいた若者はけっして少なくはなかった。いちいち覚えていないよね、普通は」
“普通は”
その言葉だけが、少し強調された。
「それでも記憶に残るような。思わず目で追ってしまう、そんな女の子なんだよ。ユウちゃんは」
――!
「防犯カメラの映像で、あいつの発言が確証に変わるのも時間の問題だろう」
愁さんが顎に手を当てている。考えるときのクセのようだ。
「おそらくはね」
あの夜、ひとりで渋谷を歩いていたとき
カメラの存在なんて気にもとめていなかった。
唯一気にしていたのは制服のままウロウロしていて補導されないかということだけ。
他のことに気を取られている余裕などなく“目的”を済ませることだけを考えていた。
……はやく紙袋を渡そうと必死だったんだ。
「そこで重要なのは、燐と一緒にいたところが記録に残っているか、という点だ。燐は顔が広いからすぐに足がつく。それから、二人の様子を見た可能性がある人物はどの程度いるのか。それも把握しておきたい」