総長さんが甘やかしてくる②(※イラストあり)
わたしは、この町だからこそ
自分でも驚くくらい明るくなれている。
だけど、これまでのわたしは――。
【同じ空気を吸わせたくない】
【××さんって生きてて楽しいのかな】
……ろくな扱いを受けてこなかった。
存在しているだけで誰かの邪魔になった。
そんな過去があることを、いちばん知られたくないのが、幻さんだ。
幻さんが昔のことで悪くいったり評価をさげたりするような人じゃないと、信じている。
それでも、
【綺麗だ、夕烏】
【可愛いよ】
好きな男《ひと》の前でくらい女の子でいたい。
かわいいって思われたい。
そんな、ワガママな感情が消えない。
「その、ユウに絡んでたって男がなにか話したら捜査が進んじまう可能性があるな」
「そこは問題ないよ。ちゃんと、友達になったから」
「はあ? 友達?」
「そう、おともだち。いつでも連絡とれるし、余計なことしてくるわけない」
「信用できるのか?」
「信用は、できない。でもあの日、渋谷にいたことがバレたくないのは向こうも同じ。ボクたちとの間にあったことは、そいつが話すはずがない。だよね、ユウちゃん?」
「……はい」
言えるわけ、ないよ。
――少女を“買った”のだから。
わたしは、友達に騙されてその男と会った。
あやうく、どこかへ連れて行かれそうになった。
本当に事件沙汰になるところだった。
そこを、燐さんが助けてくれた。
オジサンは『大金を払った』と言っていた。
燐さんの言うとおり、わたしとの繋がりを明かしたくないのは、あのオジサンの方だ。