総長さんが甘やかしてくる②(※イラストあり)


燐が、身を起こす。

まっすぐに俺を見てこう言った。


「好きとか全然わからないし。わかりたくないし。本気で誰かを想うなんてしんどそうだし、やろうとも思わないんだけど。キスしたかったのは本心」


返す言葉が、見つからない。


「愁の頭の中、ユウちゃんだらけだから。オレのこと考えさせたくなった」


俺は今こいつに、年上として、仲間として、人として。なにか言葉をかけてやらなきゃならないのに。


かけてやりたいのに。


【なに目線でいってるの】


(言葉が見つからない)


俺はこいつの保護者でもなければ

恋人でもないが


ダチにも、なりきれていないのか?


「キミはいつまであの子を想って苦しむのかな」

「燐、」

「あの子の前では誤魔化したけど。キミがあの子を自分から抱きしめたって聞いたとき。……あの子になりたいって思った」

「!」

「さすがのキミも。こんなオレの気持ちには応えられないでしょ。引いてるんだよね」


燐のこと、仲間だと思う。

一緒にいてやりたいとも。


だけど。


「だから重いって言ったのに」


俺は燐の気持ちに応えられない。


それは、男だから?


ユウがまだ好きだから?


窓がガタガタと音を立て

より一層風が強まっているのがわかる。


「ある、台風の夜」


(……?)


「風はもちろん。雨も雷もひどくて。抱きしめてくれる人が傍にいれば、少年は、誰かのぬくもりを心地いいと感じることができたかな」

「燐……」

「孤独な少年は。バケモノにならずに済んだのかな。ねえ、愁」

< 243 / 271 >

この作品をシェア

pagetop