総長さんが甘やかしてくる②(※イラストあり)
燐が、身を起こす。
まっすぐに俺を見てこう言った。
「好きとか全然わからないし。わかりたくないし。本気で誰かを想うなんてしんどそうだし、やろうとも思わないんだけど。キスしたかったのは本心」
返す言葉が、見つからない。
「愁の頭の中、ユウちゃんだらけだから。オレのこと考えさせたくなった」
俺は今こいつに、年上として、仲間として、人として。なにか言葉をかけてやらなきゃならないのに。
かけてやりたいのに。
【なに目線でいってるの】
(言葉が見つからない)
俺はこいつの保護者でもなければ
恋人でもないが
ダチにも、なりきれていないのか?
「キミはいつまであの子を想って苦しむのかな」
「燐、」
「あの子の前では誤魔化したけど。キミがあの子を自分から抱きしめたって聞いたとき。……あの子になりたいって思った」
「!」
「さすがのキミも。こんなオレの気持ちには応えられないでしょ。引いてるんだよね」
燐のこと、仲間だと思う。
一緒にいてやりたいとも。
だけど。
「だから重いって言ったのに」
俺は燐の気持ちに応えられない。
それは、男だから?
ユウがまだ好きだから?
窓がガタガタと音を立て
より一層風が強まっているのがわかる。
「ある、台風の夜」
(……?)
「風はもちろん。雨も雷もひどくて。抱きしめてくれる人が傍にいれば、少年は、誰かのぬくもりを心地いいと感じることができたかな」
「燐……」
「孤独な少年は。バケモノにならずに済んだのかな。ねえ、愁」