総長さんが甘やかしてくる②(※イラストあり)
『どうして……一体どこに……はやく帰ってきて、夕烏。ああ。今すぐあの子を、抱きしめたい』
――虫唾が走った。
これまで、散々、人に優しくあろうと思ってきた。
負の感情を抱かないように心がけた。
運命を呪ったって仕方ない。
前を向くのは自分だと。
――いつか、王子様が。
そんな素敵なタイトルの歌があったような。
なんの挿入歌か思い出せないけれど、お姫様がでてくる物語だったと思う。
王子様に会えることを夢みて
楽しいことを考えて、その日を乗り切ってきた。
だけど。
『どうか、無事でいてちょうだい』
――なんて白々しいのだろう。
知ってた。知ってたよ。
おばさんは平気で嘘をつくことくらい。
それでも、お腹の底から、虚しさと、怒りと、絶望と、悲しみが。そんな負の感情がわいてきて。
わたしは、胃の中が空っぽになってもまだ、吐き気がおさまらない。
みんなには、気づかれていない。
――この二日、ろくになにも食べていないことを。