【最愛婚シリーズ】クールな御曹司の過剰な求愛
「そうだ! サイズが合わないんじゃないですか?」

 身長は百六十センチ後半。女子にしては高いほうだが決してモデル体型ではない。

「それも心配いりません。うちのチームが腕によりをかけてあなたを素敵な花嫁にしますから」

「そんなぁ」

 どんなに断ろうとして、デキない理由を並べてもすべて神永さんに潰されてしまう。

 肩を落としていたわたしのバッグから「ウーウー」という電話の着信音が聞こえた。

 もしかしたら、なにか逃げる理由になるかも?

「あの、電話よろしいですか?」

「どうぞ」

 神永さんに確認してからスマートフォンを手にする。ディスプレイには会社の電話番号が表示されていた。

「もしもし、尾関です」

≪尾関くん、わたしだけど≫

「あ、課長。お疲れ様です」

 なんだか嫌な予感しかしない。スマートフォンを握る手に汗が滲む。

≪そろそろ神永さんとの契約が終わったんじゃないかと思ってね》

「あ、はい……あの」

 今まさに、難航しているとは言い出せない。わたしの歯切れの悪さに課長は何かを感じ取ったみたいだ。

≪まさか、契約できないなんて言わないよな》

「え、あの。その……」

 どうしよう。どうしたらいい? 

 パニックになったわたしは、電話を握りしめて、おろおろしてしまう。

 すると神永さんが、すっとわたしのスマートフォンを取り上げた。

「ちょっと!」

 いったい何するつもりなの? 

 わたしが慌ててスマートフォンを取り返そうとすると、神永さんは形の良い唇に人差し指を当てて「しー」というジェスチャーをしてわたしを黙らせた。

 思わず言うことを聞いてしまい、手をひっこめた。
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