【最愛婚シリーズ】クールな御曹司の過剰な求愛
「え、っと。あ、そうだ! 結婚前にウエディングドレスを着ると婚期が遅れるって言うじゃないですか?」

 そう、美人でもなんでもないのだから、ただでさえ遅れがちな婚期がますます遅れるなんて、死刑宣告をされているみたいなものだ。

「昨今は晩婚化も進んでいるし、若い人にはない素敵な結婚式になることが多いですよ。それにきっと尾関さんなら何歳でもウエディングドレスが似合います」

 ありがとうございます!――と言いそうになって慌てて口をつぐんだ。

 あきらかにわたしを説き伏せるべく口にした言葉に、まんまと騙されそうになる。

「そうかもしれませんが……。あ、それにモデルの方おふたりとも体調不良になられたんですよね? だったら新婦役だけいてもしかたないんじゃないですか? 

それならもういっそのこと、チャペルの雰囲気だけ味わってもらった方がいいと思うんです」

 我ながらいい回避策を思いついたものだ。模擬とはいえ、新婦ひとりで祭壇に立つわけにはいかない。

 これでやっとモデルを回避できる。そう安心したのは数秒間だけだった。

「それなら問題ありません。新郎の方は僭越ながら私がさせていだきますから」

「へ? 神永さんが?」

 まさか、社長自ら模擬挙式のモデルをするなんて。

「他のスタッフは、各自仕事がありますから。ですから一番手の空いている私が適任なのです。都合のいいことにキャンセルになったモデルと体系が同じぐらいなので助かりました。ですから尾関さんの心配には及びません」

 いい案だと思ったのに。




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