【最愛婚シリーズ】クールな御曹司の過剰な求愛
あぁ、神様。チャペルなんだから近くにいるはずですよね?早く終わりますように。よろしくお願いします。

 彼の顔がどんどん近づいてくる。

 触れることはないとわかっていても、恥ずかしさと緊張でぎゅっと目を閉じて、時が過ぎ去るのを待つ。

「ふふっ」

 へ? 笑った?

 神永さんの笑い声が聞こえた。不思議に思って堅くつむっていた目を開ける。するとそこには何か企んでいるような神永さんの顔がドアップであった。

 次の瞬間――。

「え? ――んっ……んーーー!」

 柔らかいものがわたしの唇を捉えた。それが神永さんの唇だと気がつくのに数秒かかる。

 ど、どうして?

 目を開けたまま硬直してしまう。その間も彼の唇はわたしのそれを食むようにキスを続けた。

 なに、が起きているの?

  状況の把握ができていないわたしを現実に引き戻してくれたのは、会場にいる女性客の「きゃぁ♡」という黄色い声だ。

 彼から離れようと、体に力を入れる。けれど両腕を掴まれたままのわたしは逃げることができずに、そのまま彼のキスを受け続けた。
 な、なんでぇ?

 恥ずかしさから目をつむると、余計に彼の唇の感触が鮮明になる。あったかくてやわらかくて……。

 思わず体から力が抜けた瞬間、彼の唇がわたしの下唇を名残惜しそうに吸ってから離れていく。

 それまで支えていた彼の腕から力が抜けたことによって、わたしの体がぐらっと傾く。
< 54 / 138 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop