【最愛婚シリーズ】クールな御曹司の過剰な求愛
「あ、おいしいです。バターの香りがすごくいい」

 わたしの言葉に坂上さんがにっこりと笑った。

「今回新しく取引することになった洋菓子店のなんです。エスポワールの特注品。よかったお口に合って」

「ありがとうございます。ああ、幸せです」

 さっきまで落ち込んでいたのに、現金なものだ。

 パクパクとフィナンシェを頬張るわたしの前に、坂上さんが座った。

「ちょっと個人的な相談があるんだけど」

「え? なんですか?」

 お菓子を置いて、話を聞く。

 実は先日の模擬挙式のときに頑張ったおかげで、坂上さんや他のスタッフとも打ち解けた。以後神永さんを訪問したときも、皆が声をかけてくれるようになった。

「実は、わたしも少し資産運用してみようかと思って。ほら、わたしおひとり様でしょう? だから将来がちょっと心配で」

「そうですか。まあ将来のことはどんな人でも多少なりとは心配ですからね」

 坂上さんは仕事もできて、見かけも所作も美しい。わたしから見れば綺麗な憧れのお姉さんだ。すぐにでもいい人が見つかりそうなんだけれどな。
 
そんなことを考えながらも、いくつか提案できそうな個人向けの商品を思い描く。

「だったら少額からできる確定拠出型年金なんていかがですか? 所得控除もできますし、資産運用の一歩としてはいい商品だと思うんですけれど」
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