【最愛婚シリーズ】クールな御曹司の過剰な求愛
「あ~聞いたことある。でもなんだか難しそうで尻込みしちゃうな」

 そういう人は多い。証券会社が銀行よりも近寄りがたいと思われるのは商品が複雑そうに見えるからだろう。

「それをわかりやすく説明するのがわたしの仕事です」

 バッグから持っていた資料を取り出し、どういった商品なのかメリットとリスクの話をする。
 
 坂上さんは頭の回転の速い人で、わたしの説明をよく理解してくれた。

「なんだかよさそうな商品ね。だったら少しやってみようかしら」

「はい。ぜひ!」

 前向きに検討してくれることになってよかった。

「尾関さんに聞いてよかった」

 口座開設に必要な書類の一覧を説明しながら、喜んでくれている坂上さんを見てこの仕事がやっぱり好きだと実感する。

 営業という仕事柄、会社から数字のことを厳しく言われるのは当たり前だ。お客様の大切な資産をお預かりするのだからミスがあってはいけない。

 大変な仕事だけれど、やはりこういう瞬間にこの仕事をしていてよかったと思う。

「こちらをすべてそろえていただいて、一度弊社へとお越しください」

「はい。よろしくお願いします」

 挨拶を交わして外に出て、いつもの通り芝生の中のレンガ道を歩く。
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