【最愛婚シリーズ】クールな御曹司の過剰な求愛
「留学もしていたから、てっきりナイフとフォークを華麗に……ってイメージでした」

「そう? でも俺日本人だから、アメリカにいる間も自宅では箸だったし、レストランでも箸があるところでは箸ばかり使っていたよ」

「そうなんですね。じゃあわたしも遠慮なく」

神永さんに倣ってお箸でいただく。

「たしかにシチュエーションによっては、きちんとしたマナーにのっとる必要があるけど、俺と尾関さんの仲なら、そんなことに気をつかうよりも楽しく食事をするほうがいいと思わない? ほら食べて」

「はい。いただきます」

最初にカポナータを食べる。口の中に広がる酸味と甘みがほどよく食欲が刺激される。

ん~おいしい。次は……っと。

次々と夢中で箸を進めていたわたしは、はっとして顔を上げる。ニコニコしながらわたしを見ている神永さんと目があった。

「すみません。おいしくてつい夢中に」

「気にせずに食べて。見ていると気持ちいいよ。たしか、披露宴のときもすごくおいしそうに食べていたのを、今ふと思い出したんだ」

そんなところまで見られていたの?

途端に恥ずかしくなって、箸を持つ手が止まってしまった。

「どうかした?」

わたしが急に食べるのをやめたので、彼も不思議に思ったようだ。

「そんなふうに食べているところを見られると、恥ずかしいです」

ほんのりと赤くなった顔をごまかすように、グラスを持ちミモザを飲む。

「恥ずかしい? 神様の前で愛を誓い合った仲なのに?」

「……ぐ、ごふぉ、ごほっ」

「おい、おい。大丈夫かい?」
< 64 / 138 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop