家庭訪問は恋の始まり
私は、振り返って、子供たちに声をかける。

「みんな、今はどこにいればいいのか、
分かるよね?」

子供たちは、顔を見合わせて、元の場所に戻っていく。

だけど、嘉人くんだけは、戻らないで、涙で顔をくしゃくしゃにして私の後ろにくっついていた。

「嘉人さん。」

私が声を掛けると、そばにいた三宅先生が嘉人くんの手を取ってみんなと並ばせようとしてくれた。

だけど、嘉人くんはその手を振り払って私の所へ駆け寄ってくる。

「夕凪先生、行かないで。
夕凪先生、行っちゃやだ。」

嘉人くんは、私の手を握って引き戻そうと引っ張った。

こんな風に引き止めてもらえるなんて、私はなんて幸せなんだろう。

私は、嘉人くんの前で立膝をついて、嘉人と目の高さを合わせた。

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