家庭訪問は恋の始まり
もしかしたら、手首にアザができるかもしれない。

それでも、今、離す訳にはいかない。

興奮状態の嘉人くんは、他の子を傷つける可能性があるから。

私は嘉人くんを連れて、今日は誰も使っていない相談室へ入った。

「嘉人さん、座りなさい。」

私は、出来るだけ静かに言う。

こちらが声を荒げれば、嘉人くんはますます興奮してしまう。

嘉人くんは、大人しくそこの椅子に座った。

「先生ね、嘉人さんに聞きたい事があるの。
嘉人さんは、何の事だか分かる?」

「……… 」

嘉人くんは答えない。

「嘉人さんは、何のお話か、全然分からない?」

俯いた嘉人くんは、首を横に振った。

「そう。分かるんだね。
何のお話だと思う?」

私は出来るだけ優しく聞く。

「………礼央さんの事。」

「そう。礼央さんの事。
嘉人さんは、礼央さんが、けがをしたのは
知ってる?」
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