家庭訪問は恋の始まり
私は、嘉人くんの目を見て伝える。

嘉人くんは、涙を零しながら、頷いた。

「人にはね、得意な事と苦手な事があるの。
かけっこが得意な子もいれば、
字が上手な子もいるでしょ?
でも、かけっこは遅くても、足し算は早い子も
いるし、足し算は遅くても、元気よく挨拶が
できる子もいる。
だから、みんな苦手な事だけど、ちょっとでも
できるようにするために、体育を頑張ったり、
算数を頑張ったりするの。
嘉人さんは、かけっこも早いし、算数も
できるし、挨拶だってとても上手。
ただ、我慢をするのがちょっとだけ苦手
なのかな?
だから、嘉人さんの中の小さな我慢する心を
ちょっとずつ大きく育てていこう?
先生もお手伝いするから、一緒に頑張ろう?」

「うん。」

嘉人くんは、涙に濡れた顔で、にっこりと笑った。

「よし!
じゃあ、明日、学校で謝ってこい。
それができたら、明日の夜、パパと
礼央くん家に謝りに行こう。」

お父さんは長い腕を伸ばして、嘉人くんの頭をわしゃわしゃと撫でる。
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