仮面夫婦~御曹司は愛しい妻を溺愛したい~
(ヘルパーさんの相談って、何だろう)

恵美子の話が気がかりだった。

実家のみんなが風邪でダウンした後、恵美子の負担を軽減する為に、週に三回程家事ヘルパーを雇っている。

美琴が手配して報酬を支払っていた。

(もしかして、手伝いに来てもらう日を増やしたいって相談かな?)

そう考え至ると、美琴は顔を曇らせた。

報酬は、美琴が一希の妻として毎月受け取っているお金から工面して支払っていた。

かなりギリギリのやりくりでこれ以上家事ヘルパーへの支払いが増えては、神楽一希の妻としての体面を保つ為に、必要最低限の費用が足りなくなる。今だって自分の娯楽には殆ど使っていないのだから。

(どうしよう……)

一希には相談出来ないし、事情を説明する気もない。弱みは見せたくないのだ。

かと言って、美琴に纏まった個人資産は無いし、一希に黙って仕事に出るのも不可能だ。

しばらく悩んだ末、久我山の祖父に相談すると決心した。

神楽家ほどの財力はなくても、一般家庭を支援するくらいなんてこと無いはずだ。

祖父は実家の状態を把握しているから、話もしやすい。

ひとまず目処が立つと、再び気持ちが塞いで来た。

年の離れた弟妹の為に、いつも大晦日や元旦は、ご馳走を作って、みんかでワイワイと過ごしていたから、会話相手すらいない今の状況が堪えてしまう。

だからと言って、ほかに連絡できる相手がいなかった。

一希との結婚の為久我山家に移ってから、友達とも疎遠になっているのに、自分が寂しい時にだけ都合良く連絡は出来ない。
既婚者の友人は、年越しの準備で忙しいだろう。
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